荒馬とは

荒馬 概要

青森県の無形民俗文化財に指定されている今別町の伝統芸能です。

荒馬は、田植えが終わり田の神が天に昇る時、農民が神に加護と感謝を表すための「神送り」「サナブリ※」の行事と言われており、町内各地で継承されています。

地区ごとに跳ね方に違いがあり、それぞれの地区名を取り「今別荒馬」「大川平荒馬」「二股荒馬」に大別されます。

荒馬の概要

サナブリ=早苗饗=田植え後の早苗振る舞い(田植え後の労をねぎらうための振る舞い)が訛ったもの
サナブリ=神が天に昇る「神昇り」の転訛、サ(神)ナブリ(昇り)

短い夏を華麗に彩る夏祭り

『荒馬』と書いて「あらま」と読むこの祭りは、馬役の男性と手綱取りの女性が男女ペアとなり荒々しく跳ね回り、今別の短い夏を全力で駆け抜けるような激しい祭りです。

男女がペアで行われる伝統芸能は全国的にも珍しく、男女の息が合わないと綺麗に跳ることができないため、お互いを思いやる阿吽の呼吸が必要となります。ゆえに、荒馬が縁で結婚したカップルも多く、縁結びの側面を持ったお祭りでもあります。

各団体間で相違はあるものの、跳人・荒馬・囃子・ねぶた灯篭の並びで運行され、各個口で跳ねながら町内を練り歩きます。 毎年8月初旬には、特設会場にて各団体が一堂に会して合同運行が行われ、夜には花火大会も開催されるなど、今別の短い夏を華麗に彩っています。

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荒馬まつり 祭りの様子
跳人跳人
荒馬荒馬
囃子囃子
ねぶた灯篭ねぶた灯篭

荒馬の歴史

歴史的な文献が現存しておらず、確たる歴史については不明な点が多いですが、由来は江戸時代までさかのぼると良い伝えられています。

一説には海沿い・松前街道沿いの今別荒馬は江戸時代の参勤交代で松前藩の殿様が海を渡って松前街道を通った際の騎馬の勇壮さを表していると言われ、内陸の大川平荒馬及び二股荒馬は農耕馬を表していると伝わっています。

騎馬である今別荒馬がいつしか農耕馬である大川平荒馬・二股荒馬の由来と交わり、サナブリ行事として根付いたものと思われます。

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荒馬の魅力

激しい動きと他に類を見ない男女ペア

短い夏を完全燃焼するかのような激しい動きと他に類を見ない男女ペアという点が最大魅力ではないでしょうか。

今別町の人たちは、荒馬のお囃子を聞くと『じゃわめぐ(ざわめくの転訛、ソワソワしていてもたってもいられない状態)』のを抑えられず、『ほんず落として(我を忘れて)』『もつけさなって(お調子者、道化、夢中になって)』荒馬を跳ねます。

寒い冬を耐え忍び、農作業などの大変な仕事も我慢してきた人々が、一時だけの熱い夏を全力で楽しむ姿は皆さんの心を打つはずです。

荒馬(あらま)激しい動きと他に類を見ない男女ペア
恋を育む縁結び 荒馬

恋を育む縁結び

男女ペアであるが故に、恋を育む縁結びの側面も魅力の一つです。紅白の手綱でつながった男女はまさに運命の赤い糸でつながったようです。

荒々しく跳ねる馬役の男性を手綱取りの女性がうまく制御し、ともに躍動していく様は、男女の人生を描いているようですらあります。

「だれでも参加できる」のも荒馬の魅力

「関係人口」と呼ばれる人々の手によっても伝承されている荒馬

さらに、「だれでも参加できる」のも荒馬の魅力の一つかもしれません。多くの伝統芸能と呼ばれるものは、格式高く地域内もしくは家系・保存会員等のみにて継承されますが、今別町の荒馬は町民に広く伝承され、ひいては町外の所謂「関係人口」と呼ばれる人々の手によっても伝承されています。

祭り時には飛び入りで着の身着のまま参加する町民や観光客もおり、より一層荒馬を盛り上げてくれています。 そして、荒馬は参加してこそ本当の意味での魅力がわかるwものです。

見るだけでも十分に迫力のある演舞ですが、踊りはつたなくとも自身で参加して参加者とともに汗を流すことで一体感が生まれ、見るだけのお祭りでは味わえない心地よい疲労感と幸福感に包まれます。小さい頃に友達と一緒に夢中で遊び、疲れはてて眠った時と似たような幸せがあなたを包むはずです。

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だれでも参加できる 荒馬まつり